晴れやかな初公演日! 反面モモの表情はどんよりと冴えなかった。

 あんな予告状が届いたお陰で夜も良く眠れず、舞台裏で(せわ)しなく働く団員達に手伝いを訊ねても、ただ「見える所にいてくれ」と言われるばかり。

 デビュー前の自分はこんな時何をしていたのだろう?

 思い出そうとしても頭がぼんやりとして立ち尽くすばかりだった。

 幕の表を覗いてふと溜息をついた。

 あちら側でもスタッフが右往左往し、客席を整えるなどステージの準備に慌ただしい。

「“モモサマ”って……」

 今一度深い溜息を吐く。普通のファンならその雄姿を見たいに決まっているのに、舞台に立たせない理由が分からなかった。

 『頂きに……』とはあったが、舞台裏には関係者以外入れないし、こんなにスタッフが目を光らせているのだ。

 正直今までファンレターなる物も来なかった訳ではなく、その中には情熱的な文章や、度を越した過激な内容もなくはなかったが、それでも凪徒に届く物に比べれば微々たるものだ。