「ありがとうございます、暮さん。でも無理なんて……してないです、よ。きっと」

 ──多分。

 自分でも分からなかった。

 途中で強がりを言っている気がして、言葉が不自然に途切れた。

 それをどう感じ取ったのか、暮は何かを言おうとしてやめていた。

 言葉では気休めにしかならない。そう思ったのかもしれない。

「夫人が何故ブランコ乗りをやめたのか知っているかい?」

「え? ……いえ」

 暮は気を取り直すように二人の練習する姿を仰ぎ、いつになく優しい声を出した。

「男性は家庭を持つと、それを養うためにまた精を出す──力が出る。でも女性は……それを守るために闘争心は母性に変わり、自分が傷つく危険を恐れるようになる──それを感じたんだそうだ」

「守るために……?」

 そうしてモモも夫人の動きを目に入れた。