実際暮がメイド二人からお願いされていたリミットは十五時半だった。

 せめてその時刻まで高岡社長にモモとの時間を与えてほしいと。

 暮と凪徒がパークに到着したのは十五時。

 凪徒独りであの広大な施設内からモモを探し出すには、少なくとも一時間は掛かるだろうという見込みからの逆算だったが、凪徒はたった四十分で見つけてしまったのだ──それも組織の邪魔にも気付かぬ内に。

「なになに、タカちゃんのお陰でモモも一皮むけたようだし、団員達の(わだかま)りも消えたんだ。一件落着ってところだろ?」

 意気揚々と笑ってみせる団長に、暮は少々苦々しい笑みを返して、ふと凪徒の家庭事情のことを思い出した。

「そう言えば、凪徒が縁を切ったっていう父親って……?」

「ほお、誰からそんなこと聞いた?」



「モモ」

 その頃片付けを終えたモモは、自分の寝台車に乗り込もうというところだった。

 背後から呼びかける小さな声に驚き、ふと振り返る。

 向こう側に立つ街灯の光が、大きな黒いシルエットをぼんやりと囲み、その輪郭を際立たせている。

「先輩……?」

 いつになく着込んだ様子の凪徒が、彼女の目の前に立っていた──。