そんな二時間ほどの(うたげ)が終わりを告げ、皆がそれぞれ片付けを始めた頃、団長室では──。

「まったく……団長も人が悪いですね」

 以前のようにお茶をすするずんぐりした身体に、呆れたような視線と口調を向ける暮の姿があった。

「そうかの? そういうお前が一番楽しんでいたんじゃないか?」

「まぁ……そうかもしれませんが」

 湯気の向こうからニヤリと笑った団長が、暮の本音をつきとめていた。

「しかしどこまでが本当なんです? 自分の推測では高岡社長の誘拐偽装、それによってモモと団員みんなの気持ちが一つになることを狙ったのは何となく分かりましたが……それ以外がどうもはっきりしない」

 暮も差し出されたお茶で喉を潤し、湯呑を置いて腕を組む。

「ふむ……どれも真実じゃがの。高岡氏からの打診でモモを五日間預けるつもりは元々あった。が、謀らずしてあの誘拐予告が届き、どうせなら、と誘拐事件に仕立てたのはこのわしだ」

「でも、さすがにあの『スパイ養成候補』ってのは……」

「『あれ』も本当じゃよ」

「えぇ!?」

 『それ』だけは団長の過度な演出だと思い込んでいた暮は、思わず目の前のテーブルに両手を突いて前のめりになった。