モモは高岡の車から自分のジャージや買ってもらった洋服などを受け取り、凪徒の運転する営業車に乗り込んだ。

 後部座席から紳士と運転手の見送りが小さく離れてゆくのを、しばらく名残(なごり)惜しそうに見つめていた。

 隣に腰かけた鈴原夫人や助手席の暮に、今までのサーカスの様子を尋ねたり、自分が経験した全てを興奮気味に語ったが、疲れが出たのだろう、いつの間にか眠ってしまい、起きた頃にはすっかり夜の戸帳(とばり)が落ちたサーカス会場の入り口に辿(たど)り着いていた。

 団長は諸々(もろもろ)見越していたのか、全員が揃ったところで豪華な夕食を振る舞いねぎらった。

 モモの帰還祝いも兼ねたパーティは大いに盛り上がり、モモ自身も(おり)が剥がれ落ちたように分け(へだ)てなく会話を楽しんだ。