「おーい、凪徒~! あ、モモっ!!」

 遠くから聞こえる暮の声が、振り返る凪徒の向こうのモモを見つけた。

「みんなも連れてきたぞー!」

「連れてきたって……先に着いてたんじゃねぇのかよ」

 実は暮、凪徒が用を足している間に男性陣を一旦サーカスへ返していた。

 「秀成と女性陣・子供達を連れて十五時半にパークへ集合!」と、凪徒には内緒の計画を立てていたのだ。

「あの……お父様」

「いいんだよ、明日葉……いや、もう君は桃瀬くんだ。皆の所へ戻りなさい」

「は、はい!」

 そうしてモモは凪徒の横をすり抜け、駆け寄るメンバーの輪の中に吸い込まれていった。

 全員が心配や驚きや喜びや安堵の想いを(あら)わにして、中には泣いているメンバーもいる。

 一人一人が次々にモモを囲んでは抱き締め、再会出来たことをしみじみと噛み締めて、そんな面々を前にしたモモも──自分の本当の居場所はこの中だったのだと改めて気付かされた。

「やったな、凪徒」

 暮はそんな一団を端から感慨深く眺めて、凪徒の肩に手をやった。

 しかし当の凪徒は腕を組み、口元をヘの字に曲げたまま、右目を少し細めて暮を見下ろした。

「別に……俺が何かした訳じゃない。あいつ自身とみんなが変わっただけだ」

「ふーん、まぁ何はともあれ、雨降って地固まった訳だな」