「せ、先輩、今でなくてもっ」

「嫌だ、どれだけ俺達を心配させたと思ってるんだっ」

 半泣きで額を両手で隠すモモの小さな頭をがっちり押さえ込んだが、その刹那あのメイドの言葉が思い出され、モモの手を引っぺがそうとする力をためらっていた。



『女性のお顔にお仕置きするなんて、わたくし共が許しません』



「ああっ! ったくよ!!」

 仕方なく両手を握り、モモの両側頭部にゴリゴリ押しつけて終わりにする。

「いったあぁいっ、ご、ごめんなさい~先輩~~」

「おまっ……今、何て……?」

「え?」

 ──絶対「すみませんでした」しか言わなかったモモが、「ごめんなさい」って言った……?

 唖然とする凪徒の前、お仕置きされた部分をこすりながら、モモは自分の(こぼ)した言葉に気付かずにいた。

 ──こいつ……このおっさんやあのメイド達のお陰で何かが変わったのか……?

「凪徒~! 見つかったかー?」

 驚きで言葉を失った凪徒の背後から、暮の(のん)()な呼びかけが聞こえてきた──。