「とうとうサーカスのお迎えが来てしまったようだね……でも、どうか私のことは心配しないでおくれ。これからは君の晴れ姿を見に行くという楽しみが出来たんだ。私も(やまい)を克服して、花純くん桔梗くんと共に君を見守っていくよ……一日でも長くね」

「は、はいっ! 是非そうしてください!!」

 高岡の前にしゃがみ込み両手を握り締めたモモの背中を見下ろしながら、凪徒は自分の目を疑った。

 ──もしかして人違いしたのか? モモとは思えない洒落た格好しているし……いや、こいつ、さっき俺の言葉にちゃんと返答したよな?

「彼がブランコのパートナーなんだね?」

「あ、はい。桜先輩です」

 ──やっぱり……モモだ。

 自分を男性に『桜先輩』と紹介し、立ち上がったモモに再び身体を向ける。

 しばし視線を合わせたが、

「お前……お仕置き。デコ出せ」

「ひーっ!」

 モモのいやに幸せそうな満面の笑みが、今までの苦労を思い出させていた。

 ──そうだ……こいつのお陰で散財するわ、ブランコから落下しそうになるわ、河川敷に落ちるわ~!!