白波を立てる海岸線、皆とじゃれ合って走ったあの待ち受け画面の海を思い出す。

 モモが珍しく写真を撮りたいと言い、団員の誰かに携帯を手渡して、そうだ……後ろからこっそり近付き羽交(はが)い絞めにして、息を止めた時の苦悶の瞬間、あれがあの写真──。

 モモを宝物の一人だと言い切った団長。

 俺をモモにとっての憧れであり目標だと推測した秀成、そして尊敬の対象だと聞かされていたあのメイド──では俺にとってのモモとは?

 一体何──?

「……わっかんね」

 つい唇から(こぼ)れた投げやりな言葉と共に、シートを倒してふて寝を決め込む。

 いや、分からないというより、決めつけたくない気持ちもしていた。

「おれは分かってきたぞ」

 と突然独り言に割り込んできた少々興奮気味な暮の台詞(セリフ)

「とにかくハッキリしたのは、一番の食わせ者は団長だったってことだ」

「?」

 不敵な笑みを刻む暮の横顔を一瞥(いちべつ)して再び目を伏せる。

 それから約六時間、どこをどう巡ればそんなに時間を掛けて五十キロ程度の道のりを運転出来たのか──もはや()く気にもならないほどのドライブに付き合わされた凪徒は、ようやく辿(たど)り着いたパークの入口で立ち止まった。

 硬くなった身体の節々(ふしぶし)を鳴らしながら、必ずモモを見つけてみせると決意を新たにした──。