そしてその間の凪徒と暮は──?

「おい……お前、本当に行く気があるのかよ」

 運転は任せておけと鍵を譲らない暮の驚くほど極端なノロノロドライブに、かなりの辛抱をしてみた凪徒だったが、三十分もしない内に堪忍(かんにん)袋の緒は切れていた。

「あるに決まってる。だからこうして運転してる」

 相変わらずの調子で悠々と答える暮は、真っ直ぐ前を向いたまま海岸線のなだらかなカーブに沿って車を走らせていた。

 が、走ると言うより老人の散歩みたいな怖ろしくのんびりなスピードだ。

「何か魂胆があるんだろ? 教えろよ」

「駄目だ。今は言えない」

 暮の即答に、ギロりと睨みつける凪徒。

「やっぱり高岡のメイドに丸め込まれたんじゃ──」

「丸め込まれた訳じゃない。が、おれのやってることにはどちらにもメリットがある」

「一体何なんだか……」

 呆れた調子で暮とは反対の方向に顔を向け、太陽に照らされた波間を見下ろした。

 一度はハンドルを奪い取ってやろうかとも考えたが、これだけ暮が自信満々な表情を変えないのだ。

 こいつにも何か考えがあるのだろうと、仕方なく付き合ってやる気持ちになっていた。