「熱烈なファンだと言えば聞こえはいいが……」

「やっぱりストーカーでしょう?」

 メンバーの山から口々に動揺の言葉が洩れてくる。

 明日は大事な初日、それもおおとりのブランコがこんなではと、モモはまるで自分が悪いことをしたかのように首を折り曲げた。

「団長……だからと言って、何も犯人の言いなりにならなくても……」

「それで何か起きたらどうする? だが、ブランコなしのサーカスなんて麺のないラーメンだ」

「もう少しかっこいい(たと)えはないんですか、団長~」

 口々に飛び交うやり取りは、もはやモモの耳には入らなかった。

「モモ」

 それでも自分の名を呼ぶ声にはすぐさま反応を示した。それも凪徒の言葉だ。

「お前、悪いけど休め。こっちで何とかする」

「あ……」

 凪徒が向けた真剣な眼差しは否応(いやおう)も言わせなかった。

 仕方なく反論の言葉も引っ込めて、モモは静かにコクリと頷いた。