モモとは赤の他人の筈の女性にこうも諭されては凪徒も黙らずにはおられないが、一体どういう関係なのか?

「あんた、モモの何なんだ?」

「花純とわたくしは、お嬢様の姉でございます」

「へっ!?」

 ──両親に捨てられたモモに双子の姉?

「まぁ……たった四日間の姉妹ごっこではございましたが……」

 ──『ごっこ』……そうするとここに、おそらくこの部屋にモモはずっと滞在していたということか──。

 凪徒は改めて桔梗の向こうに広がる可憐な室内に視線を巡らせた。

 スパイ養成試験のための会場や宿泊地とは思えないが、邪険に扱われていなかったことだけは理解出来る。

「先輩様、クレ様がお待ちと思いますので、どうぞこちらからお戻りくださいませ。それと……桃瀬お嬢様を、くれぐれも宜しくお願い致しますね!」

 そうして桔梗は深々(ふかぶか)と凪徒に頭を下げた。

 まるで本物の姉のように……ここでモモはどんな生活をしたというのか。