「ではクレ様、まずはこちらをどうぞ」

「え……?」

 迫力に気圧(けお)されてついて行った中庭には、自分とは真逆と思われる可愛らしい趣味のテーブルに椅子が数脚、そこへ座らされて数分独りにされたが、やがて先程の女性が大きなデコレーションケーキを目の前に供して微笑んだ。

「いや、だから食べてる時間はな──」

「お召し上がりください。完食されましたらお嬢様の居場所のヒントを差し上げます」

「えぇっ!?」

 強い口調で割り込まれた言葉に思わず大声を上げてしまう。

 直径二十四センチ、高さは十五センチほどだろうか?

 生クリームで装飾された上部には大量の果物が山積みになっている。

 これを全部一人で平らげろと言うのか?

「外で待ってるメンバーを呼んでは……」

「もちろんそうされましたら無効となります」

「さいですか……」

 しかたなくしょぼくれた顔をケーキへ向け、目の前に置かれたフォークを手に取る。