凪徒は面倒臭いといった表情で念のため周囲を見回ってみたが、橋の手前にあったあの金属と同様の板で、案の定全てが包囲され指すら入り込める隙間も見当たらない。

 更に、

「何なんだ、ここんち、恐ろしく広いっ」

 川岸からここまでのランニングよりも、壁を見上げながらの偵察一周の方が、時間も掛かった上に精神的にもどっと疲弊した。

 ──どうする? こんな壁に囲まれて、この家がこの件に関与していることは明らかだ。でもこれじゃ、中にも入れなければコンタクトも取れない。

 凪徒は高岡邸の正門付近をウロウロしながらどうにも手段が見つからず、何も出来ないままついに立ち尽くしてしまった。

「あっ! おーい! 凪徒~!!」

 そうしてフツフツと焦燥感を募らせていた彼の背後に呼びかけたのは、ようやっと抜け道を探し当てた暮達男性陣の一行だった。

 全員が揃っている。

 ──この人数なら行けるか?