凪徒は予定通り高岡プランニングを訪れたが、予想通り人影すら見当たらず、正門も施錠されたままであった。

 無理に侵入してもセキュリティシステムが働くだけだ。

 早々に見切りをつけ、高岡邸へと再び走り出した。

 五キロ程度のショートマラソンなら、息が弾むことすらなかった。
 
 携帯のナビを見つつ順調に進む。

 船を降りてからは一度も妨害されることはなく、このまま容易に辿り着けるものと思われた。──が、

「……ったく、何だよっ、またかよ!」

 朝から大声を上げたくなるほどの『壁』がそこに立ちはだかっていた。

 ナビ上では明らかにその壁の向こうが高岡邸だ。

 入口だけが封鎖されているのであれば塀を乗り越えても構わないと思ったが、残念ながらその異様に高さのある壁は、おそらく邸宅を一周ぐるりと囲んでいる様子だった。