その頃既にモモは出発しており、以前と同じ海沿いのルートでしばしのドライブを楽しんでいた。

 朝陽に照らされた波間はキラキラと輝いて、まるで金色の花畑のようだ。

 窓を大きく開け放した途端、冷たい春風が割り込んできた。

 それは泣いたモモを笑うように、熱の帯びる(まぶた)を沁みさせた気がした。

「あの……桔梗さんはお父様が寄りたい所があるらしいと言っていたのですが?」

「え? ああ……そんなことを言ったかい? まぁ時間もあることだし、寄っていこうか。吉村君、丘の上の……宜しく頼むよ」

「はい、ご主人様」

 吉村と呼ばれた腕の立つ運転手は、言葉尻を濁されたままでも理解したようだ。

 モモは不思議そうな顔を高岡に向けたが、海とは反対側に座る彼をずっと眺めているのもおかしな感じがして、問いかけぬまま逆側の景色を目に入れた。