ボディガードの運転で滑らかに走り出した車内では、しばらくすすり泣きの声が止まらなかった。

 震えるモモの小さな肩を、大きな温かな掌が強く優しく包み込む。

「ありがとう、明日葉。お陰で二人も元気を取り戻したよ。近い内に三人で君の公演を見に行くからね」

 そんな嬉しい言葉を掛けられたら尚更涙が止まらない。

 差し出された紳士のハンカチはもうびしょ濡れだ。

 それでも泣き顔は晴れ晴れとして、喜びに満ちた笑顔が次第に現れ始めた。

「すみません、お父様……あたし、何だか感極まってしまって」

「いいんだよ。そうやって自分の感情を見せることは、君の年齢なら当たり前のことだ。内に閉じ込めることはない」

「あ……っ!」

 思わず驚きの声が飛び出してしまう。



 『内に閉じ込めることはない』──暮も語った言葉。