まだ夜も明けぬ内から鳴り響いた携帯のメロディ。

 既に目を覚まして窓越しに空を見上げていた高岡は、ゆっくりと近付き応答した。

「もしもし、随分早いね」

 発する声は明るい。

 意外でもない声色から、連絡が来ることを察していたことが見受けられる。

「ふむ……そう。まぁ予定通りなんだろう?」

 紳士は少し笑いを(こら)えるように向こう側へ尋ねた。

 応えに今一度笑みを(こぼ)す。

 それから普段の落ち着きを取り戻して、「ありがとう」と感謝を述べた。

 ──あとどれくらい持ちこたえられるかな……。

 肩幅ほど開いていた厚手のカーテンを端まで寄せて、依然(わず)かながらの日の出を見つめる。

 やがて一つ溜息を吐き、冷え切ったガラス窓を白く曇らせた後、シャワーを浴びに浴室へと向かった。



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