凪徒は流れゆく景色の中を颯爽と走り抜けながら、次に立ちはだかるバリケードを乗り越えては駆け出し、乗り越えては駆け出し……そして三度目のバリケードの前で愕然と立ち止まった。

「なっ……んだ? これ……!」

 目の前に立ちはだかる驚くほど高い壁。

 それも足を掛ける場所などないほどツルンとして垂直に近い。

 左右も民家がひしめき合っていて抜け道など見つからず、私有地に立ち入ることも(はばか)られた。

 となると残す道は後ろへ戻るかバリケードをよじ登るかだが──。

「ふん……俺を甘く見んな」

 凪徒は振り向き来た道を少し戻って、体勢を整え深く息を吐いた。

 正面から見据えた障害物は富士山のように真ん中が一番高く、そこからなだらかにやや傾斜している。

 狙いは右端の一番低い部分。住宅の塀が上手いこと足場にもなりそうだ。