「どうする? 凪徒?」
背後からの光を浴びた暮の横顔が問うた。
けれど凪徒の顔は真っ直ぐ先を見つめ、揺るがない。
「そんなこと決まってる。車で行けないなら走るだけだ」
「お前っ……!」
──って、何キロあると思ってるんだ!?
「おい、秀成、高岡邸までここからどれくらいだ?」
凪徒は通話を切らずにいた携帯に呼びかけた。
やっぱり知らねえのかよ、と暮が呆れた表情を向ける。
「えーと……最短ルートで十八キロってところでしょうか。あくまでもバリケードを気にせず進めばですが」
「ハーフマラソン程度なら楽勝だ。みんなは車で向かってくれ。こんな障害、通勤時間までやっていられる訳がない。その内解除されるだろうし、今の時間だって全てを塞いでいるなんて有り得ない。抜け道見つけて追いかけてきてくれ」
「ああ……」
逆隣の鈴原も驚きの眼で凪徒に返事をした。
凪徒は愉しそうな顔をしたまま柔軟運動を始めた。
──こんな距離、毎日鍛練している自分の体力なら全く問題ない。朝のジョギングだと思えば気持ちいいくらいだ。
「じゃな、高岡の屋敷で!」
「お、おう」
気圧された気分で見つめる全員を背にし、凪徒は悠々とフェンスを乗り越え走っていってしまった。
残されたメンバーはしばらく呆けたようにその雄姿に手を振っていたが、はたと気付いてナビのある車両に集まり、他のルートを探し出した。
☆ ☆ ☆
背後からの光を浴びた暮の横顔が問うた。
けれど凪徒の顔は真っ直ぐ先を見つめ、揺るがない。
「そんなこと決まってる。車で行けないなら走るだけだ」
「お前っ……!」
──って、何キロあると思ってるんだ!?
「おい、秀成、高岡邸までここからどれくらいだ?」
凪徒は通話を切らずにいた携帯に呼びかけた。
やっぱり知らねえのかよ、と暮が呆れた表情を向ける。
「えーと……最短ルートで十八キロってところでしょうか。あくまでもバリケードを気にせず進めばですが」
「ハーフマラソン程度なら楽勝だ。みんなは車で向かってくれ。こんな障害、通勤時間までやっていられる訳がない。その内解除されるだろうし、今の時間だって全てを塞いでいるなんて有り得ない。抜け道見つけて追いかけてきてくれ」
「ああ……」
逆隣の鈴原も驚きの眼で凪徒に返事をした。
凪徒は愉しそうな顔をしたまま柔軟運動を始めた。
──こんな距離、毎日鍛練している自分の体力なら全く問題ない。朝のジョギングだと思えば気持ちいいくらいだ。
「じゃな、高岡の屋敷で!」
「お、おう」
気圧された気分で見つめる全員を背にし、凪徒は悠々とフェンスを乗り越え走っていってしまった。
残されたメンバーはしばらく呆けたようにその雄姿に手を振っていたが、はたと気付いてナビのある車両に集まり、他のルートを探し出した。
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