一方独り残された男子の秀成は──。

「ちっくしょ、ちっくしょ、ちっくしょおっ!」

 自分の布団の上にあぐらをかき、相変わらず言うことの聞かない画面に向かって怒りをぶつけていた。

「ヒデナー、いる?」

「え……? あ、リン!?」

 おもむろに車の扉がスライドし、パジャマ姿の愛しい彼女が血走った(まなこ)に映り込んだ。

「夜食持ってキタヨー、目ぇ真っ赤! カワイソカワイソ~」

 お盆に乗せた中華料理を慌ててそのままちゃぶ台に置き、掻きむしったままの秀成の髪を優しく撫でながら抱きついた。

 肩先に(ほの)かに柔らかい感触を得たことで一気に目を覚ました秀成は、そのまま倒れ込みたい衝動に一瞬支配されたが、何にせよ眠気が飛んだのはこれ幸いと「ありがと」と言いながら肉まんにかぶりつき、再び画面を覗き込んだ。

「ネェネェ~、誰に邪魔されてるの?」

 隣で正座したリンの両腕が秀成の左腕に絡みつく。

「うーん? 国家機密レベルのどっかの組織」

 肉まんを(くわ)えながら適当な返事をし、両手でキーボードを叩く秀成。

「そのソシキってのに、殴り込んじゃえばいいジャン」

「だから~その組織に行くために探りを……あ、そっか!!」

 ──Nシステムをどうにかするんじゃなくて、こいつらの方にハッキング(アクセス)すればいいんだ!