「タイムリミットまで、最大でもあと二十五時間ってところだな……」

 凪徒の運転する営業車の助手席で、暮がぽそりと一言呟いた。

 午前・午後の各一公演、そして夜の貸切を無事終えて、前夜と同様に片瀬市街地へ向かう。

 明日は休演日ということもあり、戻り時間を決める必要はなかったが、寝ずの捜索は休み明けにも響きかねない。

 そのため女性陣の応援は明朝以降をお願いし、男性の団員のみが数台の車に分乗して併走していた。

「なぁ、凪徒」

「うん?」

 暮の横顔が自分に向けられたのを感じて、それでも変わりたての赤信号から目を離さずに凪徒は答えた。

「おれ、団長の様子を(うかが)うって言っただろ? で、いつ動き出すのかと探りを入れていたつもりだったんだけどさ、実は初めから団長は動いていたんじゃないのかな?」

「どういう意味だ?」

 一瞬切れ長の目が暮を捉えたが、青い光が視界に入り凪徒は再びアクセルを踏み込む。

「昨夜も今夜も、マネージャーが何も訊かずにあれだけの車を出させてくれたのは、絶対団長の差し金に決まってるだろ? 団長は皆が動くのを計算に入れていたってことだ。つまり、これは団長の『想定内』だって訳さ。おれは団長がモモを手放す気はないって思っている。だからきっと……」

「団長は故意に俺達を邪魔しながらも、モモを探させようとしている──って言うのか? 何のために?」