「? ……自然体でおりますけれども……?」

 ──そういうところが自然じゃないっつうの。

 苦虫を噛み潰したような凪徒の顔が、先程のモモのように夜桜を見下ろす。

「何て言うかさ、幾らここに世話になっているって言っても、別に自分がしたいことを主張しちゃ悪い訳じゃない。無理する必要なんてないってことだ。やりたいことや言いたいことがあったら、俺や団長に言えばいい」

「やりたいこと……」

 不思議そうに彼の横顔を覗くモモの真ん丸な大きい瞳から、彼女自身に自覚がないことは察せられた。

 でもきっと……自分でも気付かない内に、こいつは無理をしている。──凪徒はそう思った。

「あっ、じゃあじゃあ!」

「え?」

 一呼吸置いて掛けられた大声に、身体の向きを彼女へ戻した。

「桜が満開になったら、夜桜見物に連れていってくださいっ」

「……そこへ?」

 と、呆れたような驚きの表情で、指先を桜並木へ落とす。