「どうやらお目当てが見つかったみたいだね。試着して見せてくれるかな?」

「は……はい」

 明日葉のピンク色のワンピースも、純白のツーピースも、どれも素敵で可愛らしかったが、自分には少し大人びて感じられた。

 それに比べて手に取ったこの衣装は、何かがストンと胸に落ちてくるような納得のいく手応えがあったのだ。

「やっぱり自分で選んだ物は似合うものですね」

 花純と桔梗が更衣室のカーテンから顔を覗かせ、大きく頷きながら微笑む。

 やがて披露されたその姿で、紳士の顔にも満面の笑みが刻まれた。

「とってもお似合いだよ、明日葉」

「嬉しいです、お父様!」



 家族がいたらこんな風に買い物をして、食事をして、こんな風に笑い合えるのだと、何となくでも感じ取れた自分がいた。

 施設ともサーカスとも違う自分。

 でもこの『自分』はたとえ環境が戻っても、永遠に自分のものになったのだと思う。

 そんな確信がモモの中に芽生えていた。