「家族……」

 施設のみんな──同じ境遇を重ね、どんなにケンカをしてもすぐに仲直り出来たし、寂しい気持ちも共有出来た。

 でも年齢が上がって自分の『上』がいなくなるにつれ、誰にもワガママを言わなくなっていた。

 中学の卒業と同時に施設も卒業して、『サーカス』という未知の世界に飛び込んだ。

 そこには既に全てが出来上がっていた。

 団員達とその家族──もちろん独身組の殆どは別の場所に家族を持つが、誰一人自分と同じ過去を持つメンバーは存在しなかった──だから?



 ──だから、自分はどこか『浮いた』存在だった──?



「花純さん、桔梗さん……ありがとうございます。ちょっとだけ、分かってきた気がします……」

 『頭と心の中身をまっさらにしてごらん』

 高岡紳士から得た助言。

 少しだけ感覚的に理解出来た気がした。

 モモは自然な笑みを二人に見せ、出掛ける支度をしようと明日葉の部屋──いや、自分の部屋へと向かった──。