たぶん、きっと、そうカモメ

葉月の家は僕の家の真向かいだ。

葉月の部屋は二階にあり僕の家が目の前に見える。

僕が習い事から帰ってくると窓を開け、おかえりー!と大きな声を出した。

彼女の声がしない時は僕も彼女の部屋の窓を振り向いた。

時折、電話をしながら手を振ることもあった。

「バカ」と書かれた大きな紙が窓に貼られていることもあった。

なぜわざわざそんなことをするのだろうと不思議だった。


公園の坂道を下り家へと向かった。

葉月は基本的に明るい性格で誰とでも親しみやすい。

時折、短気で言葉遣いが荒いところもある。

誰にだって長所と短所はあるものだ。

彼女は煙草に火をつけた。

僕も一本すすめられたので吸った。

いつもより歩く速度も遅く感じた。


家の前まで着くと彼女の母親が買い物から帰ってきたところだった。

少しだけ家に寄っていかない?コーヒーでも淹れるから。

僕は家にあがらせてもらった。

葉月は部屋へと上がっていった。

父親は仕事から帰ってきておりビールを飲みながらテレビを観ていた。

僕も葉月の家には幼い頃から何度も行っていたので、僕が来たからといって誰も何も気にしなかった。

今コーヒーを淹れるからと母親が言った。

父親は僕を見るなり微笑むとまたテレビに顔をむけた。

彼女はコーヒーをテーブルまで持ってくると、向かい合わせで飲んだ。

彼女は話し始めた。

「葉月のことなんだけど。もし良かったら結婚を前提に付き合ってくれないかな?」

普段から冗談をよく喋る母親だったので軽く流していたが、いつもの微笑ましい表情とは違った。

父親も僕の方を向き、どうだろうかと問いかけた。

僕としては彼女をそういった目で見てこなかったので、急に言われても何も答えられなかった。

「葉月は葉月で素敵な人を見つけると思います。本人が選ぶのが一番かと思います」

二年後は彼女は職場の男性と結婚した。