たぶん、きっと、そうカモメ

葉月にはボーイフレンドがいた。

会社の同僚の紹介で行った合コンで出会ったそうだ。

それを聞いたのは数ヶ月前だ。

突然夜に電話がかかってきた。

「私、彼氏ができたよ」

そんな話を聞かされるのはもう数え切れないほどだ。

同じ数だけ別れの報告も聞かされた。


僕達は幼い頃から近所に住んでおり両親同士も仲がいい。

昔から葉月は男勝りなところがある。

三人兄妹で兄が二人いる。

僕は一人っ子なのだ。

葉月は僕の家のインターホンを鳴らし、直樹はいるかと毎日のように来ていた。

それが習慣化したのだろう、僕は彼女がいつ来てもいいように予定はいつも空けていた。

今思うと、彼女がいなければ僕は一人ぼっちだったかもしれない。

僕達は自転車に乗る練習やボール遊び、鬼ごっこをした。

その頃には異性として意識していたのかもしれない。

だが僕には彼女を守ってあげるだけの逞しさはなかった。

むしろ彼女の方が逞しかった。

僕よりも足が早かったし気がきく女の子だった。

僕が自転車に乗れない時も励ましてくれたし、後ろから支えてくれた。

逞しさだけが取り柄だけの彼女でもなかった。

お菓子作りが好きで時折僕にプレゼントしてくれた。

失敗したけど食べてね。

照れくさそうにする彼女は可愛かった。

ボール遊びでは僕の方が一枚上手だった。

彼女はドッジボールになると叫びながら逃げ回った。

そんな彼女をいつか僕が守る立場にならないといけないと思ったが、今でも彼女の逞しさには勝てないでいる。


「ねぇ、聞いてる?」

彼女は僕の頬をつまんだ。

うん、聞いてるよ。

僕がそう言うと彼女はため息をつき首を振った。

「男ならもう少しレディーに気をつかいなさいよね」

僕は彼女に気をつかえるほど気のきく男でもなかったし、ましてや今さら二人の関係性は変わるものとも思えなかった。