前回と前々回の授業の復習をしたためにすっかり授業の終わり時間を過ぎてしまい、少し急ぎ足で教室を出る。
エレベーターを降りて祐樹と佑真が待ってくれているであろう駐輪場に向かおうとした時、男女の話し声が聞こえた。
「......何してんの」
「あ、やっときた」
祐樹と話していた女性がくるりとこちらを向く。
「だから、何してんの」
「『何してんの』って、息子を迎えにきただけよ」
母さんは「遅いからすっかり身体が冷えちゃった」と少しだけ顔を歪めながら自分の身体をさする。
「今まで迎えに来たことなんてなかっただろ」
「たまたま町内会がさっき終わったから。たまにはいいでしょ」
「”たまには”、か」
少し嫌味っぽくつぶやいた言葉は冬の寒空に吸い込まれてしまって届かなかったのか、母さんは「それで」明るく続ける。
「吉川先生は? もうすぐ降りてくる?」
「は!?」
「だーかーら! 吉川先生!」
「どうして沙帆ちゃんが出てくんだよ」
「へえ、”沙帆ちゃん”」
意味ありげに笑う母さんに「しまった」と思うけれど、今更どうしようもない。
「それで、その”沙帆ちゃん”はいつ出てくるの?」
「だからなんでだよ」
「えー、最近尚樹がよく勉強するようになったでしょ。どうしてかなあとおもって祐樹に聞いたら、塾の先生のおかげだって言うから」
今思えば挨拶したことないし挨拶ぐらいしておこうかと思って、と笑う母さんを余所に、祐樹を睨む。
祐樹は俺の視線に気づいたのか、片手で「ごめん」と謝るポーズをした。
ニヤニヤ笑っているから、絶対反省していないだろうけど。
「先生たちはまだまだ出てこないから」
「そうなの? さっき祐樹が、『もう少ししたら出てくるんじゃないか』って言っていたけど」
こいつ……。本当にいらないことばかりいいやがって。
「祐樹の先生はもう少しで出てくるんじゃない?」
どうせならもっと勉強させるように祐樹の先生に頼めば、と付け加えると、祐樹は「あ、変なこと言うなよ」と少し慌てた。
「変なことって事実だろ。お前、期末試験も『全部赤点かも』って言ってたじゃん」
「あ、その話は」
エレベーターを降りて祐樹と佑真が待ってくれているであろう駐輪場に向かおうとした時、男女の話し声が聞こえた。
「......何してんの」
「あ、やっときた」
祐樹と話していた女性がくるりとこちらを向く。
「だから、何してんの」
「『何してんの』って、息子を迎えにきただけよ」
母さんは「遅いからすっかり身体が冷えちゃった」と少しだけ顔を歪めながら自分の身体をさする。
「今まで迎えに来たことなんてなかっただろ」
「たまたま町内会がさっき終わったから。たまにはいいでしょ」
「”たまには”、か」
少し嫌味っぽくつぶやいた言葉は冬の寒空に吸い込まれてしまって届かなかったのか、母さんは「それで」明るく続ける。
「吉川先生は? もうすぐ降りてくる?」
「は!?」
「だーかーら! 吉川先生!」
「どうして沙帆ちゃんが出てくんだよ」
「へえ、”沙帆ちゃん”」
意味ありげに笑う母さんに「しまった」と思うけれど、今更どうしようもない。
「それで、その”沙帆ちゃん”はいつ出てくるの?」
「だからなんでだよ」
「えー、最近尚樹がよく勉強するようになったでしょ。どうしてかなあとおもって祐樹に聞いたら、塾の先生のおかげだって言うから」
今思えば挨拶したことないし挨拶ぐらいしておこうかと思って、と笑う母さんを余所に、祐樹を睨む。
祐樹は俺の視線に気づいたのか、片手で「ごめん」と謝るポーズをした。
ニヤニヤ笑っているから、絶対反省していないだろうけど。
「先生たちはまだまだ出てこないから」
「そうなの? さっき祐樹が、『もう少ししたら出てくるんじゃないか』って言っていたけど」
こいつ……。本当にいらないことばかりいいやがって。
「祐樹の先生はもう少しで出てくるんじゃない?」
どうせならもっと勉強させるように祐樹の先生に頼めば、と付け加えると、祐樹は「あ、変なこと言うなよ」と少し慌てた。
「変なことって事実だろ。お前、期末試験も『全部赤点かも』って言ってたじゃん」
「あ、その話は」



