夢を叶えた日、一番にきみを想う

「尚樹のクラスは、文化祭、何かお店出すの?」

先週、授業が始まる前の休み時間、いつも通り少し早めに席へ来た沙帆ちゃんは突如俺に問いかけた。

「文化祭? うん、出すけど。肉巻きおにぎり」
「肉巻きおにぎり? へえ、今はそんなのが流行っているんだ。私たちの時は、たこ焼きとかフランクフルトとか、そういうのばっかりだったなあ」

沙帆ちゃんは目を少し見開きながら言う。

「流行ってはないと思う。クラスの変わり者が、やりたいって言っただけだから」
「そうなんだ。まあいいや、楽しみ」

“楽しみ”という言葉に気づいたのは、授業が始まってからだった。

「さっきの話だけど、『楽しみ』って何?」
「あれ? 塾長から聞いていない? この塾では毎年、先生たちが文化祭に遊びに行くんだよ」

もちろん任意だけど、と沙帆ちゃんは付け加える。

「学校での様子を知ることが、塾での指導に繋がることもあるからね」

“授業が無いからラッキー”、その程度しか思っていなかったのに、“沙帆ちゃんが、文化祭にやってくる”
たったこの事実が、少しだけ、文化祭というものを特別に、そして楽しみにしたことは、紛れもない事実だった。