夢を叶えた日、一番にきみを想う

10月の後半に差し掛かると、教室の少しだけあけた窓から、身震いをするような冷たい風が流れ込んでくる。
少し前まで暑さに悩まされていたのが噓のようだ。

「なー、これ、後4日で売り物になんのかな?」

外気とは打って変わって、汗を書くほど暑い教室の中で、翔が泣きべそをかく。

「何とかするしかないだろ。もう学校に申請は出しちゃったし、材料だって届いたんだから」

4日後に迫る文化祭で、俺たちのクラスは“肉巻きおにぎり”を売ることになっていた。
肉巻きおにぎりとは、簡単に言うと、細長いおにぎりにお肉を巻いて、食べやすいように割りばしを差したもの。
文化祭では定番ともいえるたこ焼きや焼きそばも案として出たけれど、他のクラスと被らないものが良いというクラスメートの誰かが出した意見と、「それなら肉巻きおにぎりをやりたい」と言い出した翔の意見で、俺たちのクラスは肉巻きおにぎりを売ることに決まった。

ただ、意外と作るのが難しい。
おにぎりが崩れないように力強く握ると形はいびつになってしまうし、綺麗におにぎりを握れても、妬いている途中で巻いたおにぎりが剥がれたりしてしまう。
「簡単そう」という根拠のない判断と、「せっかくやるなら本格的にやろうぜ」と手作りでやろうとする不必要なやる気が、今調理担当の人たちを泣かせていた。

「だから、後は焼くだけの冷凍食品にしておけばよかったのに」

一応、俺は、この工業高校に調理慣れしている男子がいないことを見越して、「絶対冷凍食品を買った方が良い」と主張はした。

「そんなこと言ったって、出来ると思ったんだよ」

泣きそうな翔を一瞥してから、底が見えている炊飯器からご飯をすくいだし、適当に握ってみる。
けれど、他の人たちと同じように、すごくいびつな形のおにぎりしか生まれなくて、すぐにギブアップをした。

「翔、頼むから当日は綺麗な形のを作ってくれ。1個でもいいから」
「1個?」
「おう、とりあえず1個で良いから、ちゃんとした売り物になるやつ作って。それで、それを俺の為に置いておいて」
「あ、お前、さてはそれ、サホちゃんって言う人にあげるんだろ」
「さあな」

ニヤニヤしている翔を無視して、調理担当の場を離れる。

そう、4日後の文化祭の日、他の塾の先生たちと一緒に、沙帆ちゃんが俺の高校にやってきてくれるのだ。