夢を叶えた日、一番にきみを想う

「模試を頑張ったご褒美」という沙帆ちゃんの言葉に甘えて―というか、本当はかっこつけておごりたかったのに、どうしても買わせてくれなかった―買ってもらったドリンクを持ちながら公園に入り、目の前に大きな噴水があるベンチに2人で並んで座る。
沙帆ちゃんは買ったドリンクを一口飲むと、「うん、美味しい」と嬉しそうに笑う。
塾にいないからだろうか。それとも、周りに俺たち以外誰もいないからだろうか。
その笑顔はいつもより少しだけ幼く見えた。

「今回返却された模試、本当によく頑張ったね。尚樹的には手応えあったの?」
「いや、あんまり。自信がなかったところが運よく正解していた感じだった」
「それは“運”じゃないよ、尚樹の実力だよ」

沙帆ちゃんはにっこりと笑った。

「勉強していないと、その“なんとなく”回答したところも、回答できなかったわけだからね。尚樹が頑張ったからだよ」

私も頑張らないとなあ、と沙帆ちゃんがつぶやく。

その言葉につられるように沙帆ちゃんの方を向くと、沙帆ちゃんはぼんやりと空を見上げていた。
――ぼんやりと空を見上げているように見えるのに、少し切なそうで、なぜかもっと遠い、違う場所を見ているように思えるのはどうしてだろう。

「沙帆ちゃん……?」
「ん? 何?」

俺の問いかけに応える沙帆ちゃんは、いつも通りの笑顔だった。

俺の見間違い? それとも深く考えすぎ? 
でもさっきの表情は、なんとなくいつもと違う様な気がしたけれどー…

「ううん、何でもない」
「何、変なの」

クスクス笑う沙帆ちゃんもいつも通りだけれど、一瞬だけ見せた、少しだけ苦しそうな、けれどどこか愛おしさも感じさせるような表情が、頭から離れなかった。