少しでも会えたらよかったのに。来た意味なかったな。
大きくため息をついてから帰ろうとしたとき、
「あ、サボりの尚樹だ」
後ろから、聞き慣れたーけれどここ1週間少しは聞くことが出来なかった―声が聞こえた。
「聞いたよ~? 今日の授業、サボっちゃったんだって?」
こっちの気も知らないで、のんびりと、いつも通りの笑顔で俺に笑いかける。
本当に、もう、この人は。
けれど、それ以上に。
「なに、どうしたの、その格好」
いつも私服の沙帆ちゃんは、真っ黒のスーツで身を包み、髪の毛も一つにきっちりとまとめていた。
――それはまるで、社会人のように。
「なんでそんな服着てんの……」
「ちょっと用事があってね。どう? 大人っぽく見えるでしょ」
沙帆ちゃんは得意げに、そして少しの茶目っ気を含みながら俺を見る。
ただ、俺は、きっと沙帆ちゃんが求めているであろう返しをすることが出来なかった。
だって、今日の沙帆ちゃんはまるですっかり大人のようで、いつもよりずっと、自分とは離れた場所にいるように思えてしまったから。
「……やっぱり帰るわ」
「尚樹?」
背後で俺を呼ぶ声が聞こえる。
けれどそれに応える余裕もなく、俺はそそくさと塾を後にした。
――沙帆ちゃんに会いたくて来たのに、今日はこれ以上一緒にいたくなかった。
大きくため息をついてから帰ろうとしたとき、
「あ、サボりの尚樹だ」
後ろから、聞き慣れたーけれどここ1週間少しは聞くことが出来なかった―声が聞こえた。
「聞いたよ~? 今日の授業、サボっちゃったんだって?」
こっちの気も知らないで、のんびりと、いつも通りの笑顔で俺に笑いかける。
本当に、もう、この人は。
けれど、それ以上に。
「なに、どうしたの、その格好」
いつも私服の沙帆ちゃんは、真っ黒のスーツで身を包み、髪の毛も一つにきっちりとまとめていた。
――それはまるで、社会人のように。
「なんでそんな服着てんの……」
「ちょっと用事があってね。どう? 大人っぽく見えるでしょ」
沙帆ちゃんは得意げに、そして少しの茶目っ気を含みながら俺を見る。
ただ、俺は、きっと沙帆ちゃんが求めているであろう返しをすることが出来なかった。
だって、今日の沙帆ちゃんはまるですっかり大人のようで、いつもよりずっと、自分とは離れた場所にいるように思えてしまったから。
「……やっぱり帰るわ」
「尚樹?」
背後で俺を呼ぶ声が聞こえる。
けれどそれに応える余裕もなく、俺はそそくさと塾を後にした。
――沙帆ちゃんに会いたくて来たのに、今日はこれ以上一緒にいたくなかった。



