夢を叶えた日、一番にきみを想う

“今週だけ”と聞いていたのに、その次の週になっても、沙帆ちゃんは来なかった。

「今日の授業も来れないって。吉川先生が尚樹に『ごめんね』って」

申し訳なさそうに塾長は伝言を口にした。

「そっか」

別に塾長が悪い訳ではないし、沙帆ちゃんが悪い訳でもない。
確かに沙帆ちゃんは俺にとって“先生”だけど、大学生でもあるわけで、
3歳年上で大学2年生の兄貴が“単位が”とか“試験が”とかいつも言っているように、きっと沙帆ちゃんも忙しいんだろう。

でもなあ。今日も別の先生か。
やっと先週返してもらった成績表見せられると思ったのに。
なんかなあ。つまらない、というか。

「あのさ」
「何?」と振り向いた塾長に「今日、授業休む」と告げる。
「試験前でも良いし、沙帆ちゃんがいる時に適当に振り替えて」
「え?」

戸惑っている塾長に「ごめん」とだけ伝え、校舎を出る。

「あーあ、どうしようかな」

駐輪場でオレンジ色に染まる空を見つめながら、敢えて声に出す。

この先、“先生”と“生徒”という関係が終わってしまったら、今日のように会えない日が続くんだろうな。
告白、しようかな。好きだと伝えたら、沙帆ちゃんは何と言うだろう。
付き合えないよな。きっと沙帆ちゃんは俺のこと、そんな目で見てないもんな。
けど付き合えないなら、やっぱりこの関係が終わると会えなくなるんだろうな。
――会うことに理由がいるようになるんだろうな。

会えなくなったら、この気持ちも、沙帆ちゃんに対して抱いているこの気持ちも、少しずつ消えていくのかな。
いっそ消えてくれたら、楽なのかな。
でも、消えることなんてないのかな。もう知っちゃったもんな。沙帆ちゃんがいない日は、つまらないって。

どうしたもんだ、とため息をつき、とりあえず祐樹に【先に帰る】とだけメッセージを送り、塾を後にした。