夢を叶えた日、一番にきみを想う

夏休みはあっという間に終わり、また毎日早起きをして学校へ向かう日々が始まった。
別れを告げてから、実優とは一度も話していなかった。

きっと俺と会うことも避けているんだろう。
不自然なぐらい彼女と出くわすことがなかったし、たまたま一度廊下で見かけたときも、俺に気づくや否や背を向けて走って行った。


「おー、ちょっとは涼しくなったなあ」

昼休み、屋上のドアをあけると、少し早めにやってきた秋風が俺たちを出迎えた。
適当なところに腰を下ろし、ついでに寝ころんだ翔に「なあ」と呼びかける。

「ん? なに?」
「悪いな、俺のせいで」

何は、とは言わなかったけど、翔は俺の言いたいことがわかったようで、「別にいいよ」と答えた。

俺と実優が別れたことで、今まで一緒に昼飯を食べていた茉奈は、俺たちのところへやって来なくなった。
きっと実優と一緒に食べているんだろう。俺のせいで恋人との時間を引き裂いたようで、申し訳なさでいっぱいだった。

「それより、お前が実優と別れるとはな」

付き合い長かっただろ、という言葉に、無言でうなずく。

「お前から振ったんだってな。茉奈から聞いた」
「そっか」

別れた、とは報告したけれど、それ以上のことは伝えていなかった。

「……ほかに好きな奴でも出来たのか」
翔と―というか、祐樹とも佑真とも―わざわざ恋バナをすることは今までなかったからか、少し気恥ずかしい。
翔も同じなのか、いつもと同じトーンで質問を投げかけてきたけれど、そこには少しぎこちなさが滲み出ていた。

「まあ、そう」
「誰?」
「翔の知らない人」
「なんだよ、仲間外れみたいにいうなよ」

翔はむくりと起き上がると、「サホちゃんって言う人か?」と俺を見る。

「うん」
「そっか。お前、年上がタイプだったんだ」
「別にそんなんじゃねーよ」

屋上のドアが開くと同時に、にぎやかな声が聞こえてくる。
祐樹と佑真が何かを言い合いながらこっちへ向かってくるのが視界に入った。

「まあ、確かに俺は“サホちゃん”って人のこと知らないけどさ、頑張れよ」

翔は俺の背中をドン、と強く叩く。

「付き合ったら報告しろよ。お祝いにコンビニでなにかおごってやる」
「それはどうも」

いつか付き合える日は来るのだろうか。
空を仰ぐと、真っ白な雲がいくつも浮かんでいた。