夢を叶えた日、一番にきみを想う

「沙帆ちゃんって、どっち方面?」
「私?」

沙帆ちゃんは最寄り駅の名前を告げた。
俺の家の最寄り駅とは反対方面か。

「……送っていくわ」
「え?」

俺の言葉に、沙帆ちゃんは驚いた素振りを見せた。

「だから、送っていく。もう暗いし」

沙帆ちゃんの最寄り駅に行く電車が来るホームの方へ向かうと、沙帆ちゃんは思いっきり俺のシャツを引っ張った。

「何言ってんの。私が送っていくよ!」
「そっちこそ何言ってんの? 俺は男だけど、沙帆ちゃんは女じゃん。送っていく」
「いやいや待ってよ、私が送っていくって。私は大人だけど、尚樹はまだ高校生だよ? さすがに尚樹に送ってもらうわけにはいかないって」

沙帆ちゃんの言葉が、胸にグサリと刺さる。
確かに俺は“子ども”で、沙帆ちゃんは“大人”で。
そんなことわかっていたけれど、改めて本人から言われると、なんだか少し凹んだ。

「……でも、俺、男だし」

さっきと同じことを繰り返すと、沙帆ちゃんは「でも」と続ける。

「気持ちは嬉しいけれど、さすがに送って行ってもらうことは出来ないよ。今日は私に送らせて?」

お願い、と頼みこむ姿に心が揺れる。

「今日は私が自習に誘ったんだしさ。帰り道になにかあったら、もう尚樹の授業担当させてもらえないよ?」

でもなあ。
好きな人に送ってもらうって、なんだかちょっと……プライドが傷つくっていうか。
うーん、と唸る俺に、「ね? ほら、帰り道色々話せるしさ」と沙帆ちゃんは付け加える。

その言葉で、完全に俺は折れてしまった。
かっこわりーとか、情けないとか、色々ある。
それでも、それ以上に、まだこの人と一緒に居たかった。

沙帆ちゃんは渋々だけれど頷いた俺に、「ありがとう」と微笑んだ。