夢を叶えた日、一番にきみを想う

結局その日は、塾の最後の授業が終わる時間まで自習をさせてもらった。
本当は沙帆ちゃんに謝ったら帰るつもりで、塾に来て自習するつもりなんて全くなかったけれど、きっと家にいるよりは有意義な時間を過ごせたからそれはそれでよかった。
……理科の宿題は全部終わらなかったけれど。
借りていた筆記用具を返して沙帆ちゃんと志織さんに帰ることを伝えると、沙帆ちゃんに「ちょっと待って」と引き留められる。

「私ももう帰るから。駅まで一緒に行こ?」
「うん、わかった」

沙帆ちゃんは“講師部屋”と書かれた部屋に入って荷物を取ってくると、「お待たせ」と微笑む。

「帰ろうか」
「うん」

そのやりとりはまるで仲の良い友人同士―少なくとも、先生とか生徒とか、そういう壁を超えたもの―のようで、少しだけ心が弾んだ。

「じゃあ、志織さん、私たち帰りますね」
「お世話になりました」

頭を下げると、志織さんは「またおいでよ、いつでも大歓迎だよ」と笑ってくれた。

「ありがとうございます。また来ます」

夏休み中にでもまた来ようかな。
そう思いながら沙帆ちゃんと並んで校舎を出ると、空には星がたくさん輝いていた。

「遅くなっちゃったけど大丈夫?」
「うん、全然。門限とか無いから」
「へえ、信用されているんだね」
「信用されているというか、多分子どもに興味が無いだけだけど」

本音を伝えると、沙帆ちゃんは「そんなことないでしょ」と微笑む。

「子どもに興味が無かったら、高いお金払って塾なんか行かせないと思うよ?」
「いや、留年される方が困るから、行かせているだけだと思う」

俺の答えに、沙帆ちゃんは納得していないような表情を見せた。