夢を叶えた日、一番にきみを想う

「ああ、それならむしろ私がごめんね? あの女の子が彼女で、ケンカしていたんだって信じ込んでた。尚樹は『違う』って言っていたのにね。ごめんね?」

沙帆ちゃんは微笑むと、「尚樹、モテるでしょ? 恋愛とは無縁の生活を送りつつあるから役に立たないと思うけど、女心なら少しは分かると思うから、困ったことがあれば相談してね」と付け加えた。

付き合っていると思われたくなかった。それは沙帆ちゃんのことが好きだから。
けれど、嫌な態度をとってしまった俺に「ごめんね」と謝ってくれる沙帆ちゃんを見ていると、実優と付き合っていることを隠しているような現状にやっぱり罪悪感を覚える。

付き合っていると言おうか。けれど、別れるつもりなんだ、と。
でも、どうしてだろう。彼女がいることを知られるのが、なんだか少し嫌だった。

「それで……今日は謝る為だけに来てくれたの?」
「ああ、まあ、うん。ずっと気になっていて謝りたかったから」
「尚樹は良い子だねえ、そんなの気にしなくて良いのに」

沙帆ちゃんはクスッと笑うと、「この後どうするの?」と尋ねた。

「この後? 特に何もないから、帰ろうかな」
「本当に謝る為だけに来てくれたんだ?」

ちょっと嬉しいかも、と沙帆ちゃんはまた笑う。
その言葉と笑顔に、俺まで嬉しくなる。
数十分前まで凹んでいたのに、俺って意外と単純なのかな。

「それなら、塾、寄っていく?」
「え、塾?」
「うん。こっちの校舎来たことなかったでしょ? 案内してあげるよ。あ、もちろん自習室使って勉強してくれてもいいんだよ?」
「……じゃあ、行こうかな」
「本当? じゃあ一緒に行こうか」

隣に並んで歩く。
きっと傍から見たらなんてことのない光景。それでも、この人の隣を歩くことが出来る機会が限られている俺にとっては、駅から校舎までのたった3分の道のりが、幸せで仕方がなかった。