夢を叶えた日、一番にきみを想う

祐樹に【先に帰る】とだけ送り、早足で家に向かう。

「ねえ! 待ってよ!」

小走りで俺に追いつくと、俺のTシャツを引っ張った。

「何?」
「『何?』って、せっかく」

そこまで言うと、実優は黙る。
数秒間俺をじっと見つめた後、美優は俯いた。

「……そんなにもあの人のこと、好きなの?」
「あのさ」
「……別れたくない」
「実優」
「嫌だ、別れたくない」

消え入りそうな声で、けれど確かに実優は主張した。
「尚樹はあの人のこと好きでもいいよ……尚樹がもう一度私の方が好きだって思ってもらえるように頑張るから、別れたくない……。だって私、尚樹のこと、好きだもん……」

一筋の涙が零れ落ちると、堰を切ったように実優は声を上げて泣き出した。

「ごめん……」

胸が痛む。
けれど、これ以上辛い思いをさせるとしても、俺の気持ちは伝えなければならないということもわかっていた。

俺が悪い。実優と付き合っているのに、沙帆ちゃんのことを好きになってしまった俺が悪い。俺がすべて悪い。
頭の中ではわかっていながらも、どうしようもなかった。
――だってもう、俺、沙帆ちゃんのこと、本当に。

「俺、あの人のこと、好きなんだ」
「……うん」

手の甲で涙を拭う。その仕草が、同級生よりも少し大人びた容姿を持つ彼女に、いつもよりも幼い印象を与えた。