夢を叶えた日、一番にきみを想う

「面談室、行こっか!!」

声をかけられてからは集中するように努めていたけれど、あんまり集中出来ていないことがバレていたのか、沙帆ちゃんは説明をしていた教科書をパタンと閉じた。

「最近ゆっくりお話ししていなかったしさ、久しぶりにちょっと話そうよ」

沙帆ちゃんは俺の代わりに、机の上に散らばっているシャーペンや消しゴムをさっさと筆箱の中に入れていく。
少し強引な沙帆ちゃんにつられて俺も片づけをして、一緒に面談室へ向かった。


「最近ホント暑いよねー、溶けちゃいそう」

面談室に入るとすぐに、沙帆ちゃんは冷房をつける。
その動作から少し遅れて、冷たい風が俺の前髪を揺らした。

「それで……大丈夫? 話したくないなら話さなくていいけど、話を聞くぐらいなら出来るよ」
「うん……」

聞きたい。
“小竹と付き合ってんの?”って。
けれど、もし“付き合っているよ”と言われたら、どうしたらいいんだろう。
すっぱり諦める? いや、そんなこと出来んのかな。
……でも、これ以上、このモヤモヤした気持ちを抱えているのも嫌だな。
少し投げやりな気持ちで、俺は机を見たまま尋ねた。

「……沙帆ちゃんって、彼氏いんの?」
「……彼氏!?」

沙帆ちゃんは素っ頓狂な声をあげる。
その声に驚いて、俺は視線をあげた。

「あー、わかった。そういうことか」

沙帆ちゃんは納得した様子で、「彼女とケンカしちゃったんだ?」と俺に尋ね返した。

「昨日駅で会った時、隣にいた子?」
「え?」
「あれ? あの子じゃない?」
「いや、まあ、違う」

反射的に否定してから、自分の言葉にハッとする。
でも……実優とは別れてはいないけれどもう別れるつもりだし、完全な“嘘”というわけではない、か。
咄嗟に出た否定の言葉を心の中で肯定するも、嘘をついた罪悪感が少しだけ胸に押し寄せた。

「別に隠さなくてもいいのに」

沙帆ちゃんは、実優のことを彼女だと信じ切っているのか、それとも俺の言葉を単なる照れ隠しだと思ったのかー…いずれにせよ、俺には彼女がいて、彼女とのことで悩んでいると思っているようだった。

「恋人なんだからケンカをすることはあるけれど、それでも好きな人とケンカするのって辛いよね……」
「え……」

待てよ、この言い方……まるで自分も体験しているようなこの言い方は……。

「……沙帆ちゃん、やっぱり彼氏いるんだ」