夢を叶えた日、一番にきみを想う

食っては寝てを繰り返し、そして少しだけ勉強もした三が日はあっという間に終わった。

「なーんか、全然正月らしいことしないまま、正月が終わっちゃったな」

また今日から冬期講習か、と祐樹が嫌そうに呟く。

「お前、いっぱい雑煮食ってたじゃん。十分正月らしいじゃん」
「いやいや、まあそうなんだけどさ」

勉強したくねー、と嘆く祐樹に先立つように塾の教室のドアをあけると、塾長が「あけましておめでとう」と挨拶をしてくれた。

「あけましておめでとうございます」
「今年は高校3年生になる年だからね、頑張ろうね」
「はい……」

新年早々、進級絡みのことを話されて、内心げんなりする。
まあ、今年度は学内試験でも全く赤点をとっていないから、流石に留年はないだろうけど。


座席を確認して、指定された席に座る。
昨年末に「年明け、テストするからね」と言われていた範囲の英単語を見直していると、「あー、尚樹だ」と愛おしい声が耳に届く。

「あけましておめでとう」
「……うん」

休みの間も会いたかったはずなのに、いざ会うと、なんだか照れ臭い。
少しそっけなく返事をした俺に、「あ、単語テストあること、覚えていたんだ」と沙帆ちゃんは笑いかけた。

「あのさ」

手元の単語帳から視線をあげる。

「俺、」

まっすぐ彼女を見つめる。
コテン、と首を傾げた彼女に、はっきりと告げる。

「俺、決めた。俺、世界中を飛び回る建築士になる」

あなたに追いつくために。あなたの傍にいるために。
きっと、俺が後ろにいたら、あなたはいつでも優しく手を差し伸べて、そして俺が追いつくのを待ってくれるのだろう。
でも、それは嫌だから。あなたの足を引っ張るようなことはしたくないから。

だから。
俺は、俺があなたの手を引っ張ることが出来るように、自分の好きな分野で、世界に羽ばたきたい。

ただあなたの傍にいたいだけじゃない。
いつか、あなたと対等に並んで歩み、そして困った時には力を貸せるような人に、俺はなる。
たとえ、この先何年かかっても。

「そっか。いいね、尚樹なら叶えられるよ、絶対」

俺の大好きな笑顔で、彼女はふわりと笑った。

「1年前に出逢った時は、夢を口にすることさえ躊躇っていたのに、すごいね、尚樹は。どこまで進んでいくんだろう」

すごいなあ、と沙帆ちゃんは呟く。

「きっと、自分の夢を突き動かしてくれる人と出会えたんだね? よかったね」

もし、”あなただよ”と答えたら、なんと答えるんだろう。
答えたいけれど、今はまだ答えない。でも、夢が叶った時は、この問いかけの答えも、自分が抱えている気持ちも、全部伝えたい。

「ねえ、尚樹」

沙帆ちゃんは俺を見ると、悪戯をする子どものように、少しワクワクした顔で言った。

「私も、負けないからね。お互い、絶対に夢を叶えようね」