夢を叶えた日、一番にきみを想う

「ちょっと買いたいものがあるからコンビニ寄っていい? すぐに終わるから」
「うん、いいよ」

一緒に入ろうとする沙帆ちゃんに「ここで待ってて」とだけ言い残して店内に入り、ホットドリンクの棚から”今年人気ナンバー1!特に女性に大人気!”と書かれたポップがあるカフェオレ2つを素早く取り出す。

「こんなに寒いのに店の外で待たせるのはダメだったか」と思いつつも「いやいや、一緒に店内に入ると絶対沙帆ちゃんがお金出すしな……」と思ったり、頭の中で考えている間にレジの番が回ってきた。

「……すみません、ちょっと待ってください」

母さんからもらった軍資金を出しかけたところで、ふと思い直す。
千円札をポケットに直してから財布を開くと、決して多くはないけれど、この2つのカフェオレを支払えるぐらいのお金は入っていた。

お小遣い日の直前じゃなかったことに心から感謝しながらレジで小銭を出し、店内を出る。

外に出ると、ぼんやりと遠くを見ている沙帆ちゃんがいた。

「お待たせ」
「ううん、全然ー…ってあれ?」
「今日、寒いから」

カフェオレ、とだけ言葉を添えてまだ十分にぬくもりが残っているペットボトルを彼女に渡す。

「ありがと。いくらだった?」
「忘れた。でも、いらない」
「いらない、って……。高校生の時っていつも金欠でしょ?」
「別にそんなことないし。それに、この前買ってもらったから。だからそのお返し」

でもなあ、という沙帆ちゃんに「本当にいらないから」ともう一度告げる。
俺が本当にもらうつもりがないということが伝わったのか、沙帆ちゃんは少しだけ悩んだ後「じゃあありがたくもらっておくね」と微笑んだ。

その柔らかな笑みが嬉しくて、俺まで頬が緩みそうになる。

「尚樹ってモテるでしょ」
「は、え!?」
「帰り道に暖かい飲み物をわざわざ買うなんて気遣い、普通の高校生は出来ないよ」
「……そんなことないと思うけど」

一瞬だけ間があいてしまったのは、俺も母さんに言われなければきっと思いつかなかったからだ。
悔しいけれどー本当に悔しいけれどー今日だけは母さんに感謝することがいくつかありそうだ。