次の日。

私は、自分の着物に着替えて、小さな荷物をまとめた。

思えば、人買いに売られた時に持って来た荷物、それだけだ。


「今までどうも、ありがとうございました。」

亮成さんと、志麻さんが頭を下げてくれた。

「いえいえ。お礼を言うのは、私の方です。」

そうそう。

いろいろ、礼儀作法とか、勉強とか教えて貰ったのが、亮成さんだった。

結構厳しくて、何度も何度も、やり直しって言われた。

志麻さんには、この屋敷の事を、教えて貰ったな。

お嬢様と使用人って言うよりは、友達みたいな関係だった。


「また、会いに来てくださいね。」

志麻さんが、私を抱きしめてくれる。

「うん。亮成さんも、お元気で。」

「はい。うたさんも、お元気で。」

そして私は、少しだけ離れた将吾様の前に立った。