「つまらない」
私のつぶやきは誰にも聞こえない。
誰も彼も噂に振り回されて、
本当の私を見ようとしない。
「おい乃之っ!走ったら危ない…」
「きゃっ」
「っ…」
誰かとぶつかった。
角から飛び出してきたちっこい女。
誰だよこいつ…
「ご、ごめんなさい!!」
ばさっと、セミロングの茶髪を揺らしながら、頭を下げる女。
聞くだけで嫌悪感がするその、汚れを知らないような綺麗な声は聞き覚えがあった。
「堰本さん…」
チッ、接触しないつもりだったのに…
「あの、お怪我は…」
「ううん。だいじょーぶ!堰本さんこそ、大丈夫?」
「はいっ!大丈夫です!」



