全力で楽しむことを決めた最後のひと月は飛ぶように時間が過ぎた。


原作通り壱華と志勇の結婚式と披露宴、さらに神前式は3月に盛大に行われ、私は周りが引くほど泣いて後から写真を見返したら目の周りがパンパンに腫れていて自分でも笑った。


白無垢姿の壱華も神々しくて綺麗だったし、ウエディングドレスの壱華はまさに女神のようだった。



「はぁ、楽しかったなあ……」



写真を見て思い出を振り返り、独りごちるのは大阪に向かう車の中。


気がつけば約束の1か月を迎え、私は大希の宣言通り大阪に飛び立ち、手配された西雲の送迎車に揺られていた。


西雲の護衛の人と共に飛行機で羽田から関西空港まで行き、そこから車で移動。


西雲の本拠地が近づくにつれ、妙にそわそわして仕方ない。


だってこの選択肢が私にとってのハッピーエンドに繋がるとは到底思えないから。



「遅ない?予定してた時間より30分も過ぎてるやん」



不安を胸に西雲の本家の門をくぐると、待ち構えていたのは腕を組んで仁王立ちする大希だった。