笑顔でモップを受け取って廊下の掃除を続行する。


すると、曲がり角で人に鉢合わせてしまった。



「あっ、すみません」

「……チッ」

「おはようございます雅さん」



顔を上げるとそれは雅だった。


いきなり舌打ちされたけど笑顔で挨拶を試みる。




「今日はいい天気ですね雅さん」

「名前で呼ぶなや」



だめだ、私の笑みが全く通用しない。


確かに顔がいいから女に微笑まれたくらいじゃ揺らがないよね。


ねえ大希、私絶対この人と仲良くできないよ。


まあ、怖がってたって仕方ない。


気を取り直して二階の物置にモップを片づけ、階段を駆け下りる。



「ほっほっ……うわあ!」



小さく掛け声を呟きながら一段下まで行くと、横から人影が出現して声を出してしまった。



「なんや化け物に会ったみたいに」

「なんだ大希か」



焦ったけど、それが大希だったからそのまま走り去ろうとした。



「てか気になってたんやけど、その手、なんなん?」


「は?」



しかし話かけられたため立ち止まった。


大希の視線は、胸を押さえるように置いた手に集中している。