二人で海外旅行など、関係を世間に晒してしまうようなものだ。五十鈴のアイドルとしての人生が終わってしまう可能性だってある。だが、幸せそうに話す五十鈴を見ていると、椿芽はそんなことは言えなくなってしまうのだ。

「……いつか、一緒に行こうね」

その時だった。椿芽の耳にパシャリと小さな音が聞こえる。カメラのシャッター音のようだ。椿芽は足を止め、周りを見る。カメラを持っている人の姿はどこにもない。

「椿芽、どうしたの?」

心配そうに五十鈴が訊ねる。椿芽は気のせいかと胸を撫で下ろし、「何でもない」と笑った。



一日だけの休みが終わってしまうと、大人気アイドルの五十鈴はまた撮影で忙しい日々が始まる。そのため、今日もマンションに帰ったのは椿芽一人だ。

「ふぅ……。今日も疲れたなぁ」

もうすぐ保育園では運動会が行われる。そのため練習や準備があり、いつも以上に疲れてしまった。

「あっ、そういえば今日ポストの中見てないな」