五十鈴がドアを開け、パンプスを履いた椿芽は外へと出る。ふわりとどこからか吹いてきた風が優しく髪を撫でた。

「椿芽」

ドアの鍵を閉めた五十鈴は、ニコニコと笑いながら椿芽に手を差し出す。椿芽がその手を取ると、自然と指が絡み合っていく。

「今日は一日ずっと手を繋いでいたいな」

自分よりもずっと大きな手に椿芽の心臓の鼓動は早くなる。久しぶりの熱に、体が緊張を覚えてしまった。

「……カフェの中じゃ目立つかもしれないから、カフェに着いたら離してね」

椿芽が真っ赤な顔を背けながらそう言うと、「は〜い」と元気よく返事が返ってくる。その声にさえ胸をときめかせてしまった。

手を繋いだまま二人は歩いていく。二人の話題となっているのはこれから行くカフェの話だ。

「色んな国のスイーツが食べれるんだよね。海外旅行に行った気分になりそう!」

「そうだね!だけど、俺はいつか椿芽とプライベートで海外旅行に行ってみたいな。二人で行ってみたいところ、たくさんあるから」