青時雨


「──どうすれば、良いのでしょう?」

 私は問いかけた。

「僕が牧師や立会人の代わりに問いかけますから、それに一言、『誓います』と答えてくだされば大丈夫です」

 そして悠介さんは、長椅子に腰掛けたまま、囁くような声で即興の『誓いの儀式』を始めた。

「汝、戸田純は、片桐悠介を夫として、如何なる時も、共に在ることを誓いますか」

「──誓います」

 小さな、でもはっきりとした声で、私は答えた。

「ありがとう、純さん」

 悠介さんは微笑んだ。

「では同じ問いかけを、今度は僕にしてくださいませんか」

 私は頷くと、呼吸を整えて、言った。

「汝、片桐悠介は、戸田純を妻として、如何なる時も、共に在ることを誓いますか」

「──誓います」

 悠介さんは、いつもの優しい瞳で私を見詰めながら、そう囁いた。

 牧師も立会人もいない、二人だけの結婚式。でも荘厳なパイプオルガンの音色と、競い謳うようなステンドグラスの輝きが、私たちを包んでいてくれた。

 涙が溢れて、頬を伝った。