3日後の朝、私は担当医から退院の許可を得て、病室を後にした。
エレベーターで1 階に降りると、外来患者や付き添いの家族で混雑するエントランスホールに、カジュアルシャツ姿の悠介さんが待っていてくれた。
「お待ちしていました、純さん」
悠介さんは精悍な顔を緩めて、私に優しく微笑みかけた。褐色の肌と真っ白な歯のコントラストが、素敵だった。
「行きましょう」
悠介さんは私の荷物を担ぐと、ごく自然に腕を差し出した。
私も微笑んで、彼の手を取った。
背が高くがっちりとした悠介さんと、細身の私の組み合わせは、エントランスホールでも一際目立った。
何も言っていないのに、私たちの進む先の人波が割れて、私たちは祝福の道を歩む新郎新婦のように、混雑するエントランスホールを後にした。
そして私たちは、駐車場に停めた悠介さんの白く大きなSUVに乗り込んで、週末旅行にでも出かけるような気安さで、病院を後にした。
「那須に行きましょう」
悠介さんが言った。
「僕の別荘があるんです。赤い煉瓦造りの、静かな別荘です。あそこなら誰にも邪魔されません」
私は彼の目を見詰めて、小さく頷いた。