翌年僕は先生の元へ手作りの肉じゃがを持って行った。

牛肉、じゃがいも、人参、玉ねぎの材料で後は適当に煮汁を作った。

んー、うん、悪くないと先生は言った。

「それより、あなたどうして由香と付き合っていることを教えてくれなかったの?あなたはいつも大切なことを話さないじゃない?」

適当に返事をすると彼女は微笑み、あなたはあなたのままでよかったわと言った。

ミーちゃんがあなたと同じ大学だから面倒をみてあげてねと先生は言った。

面倒をみるも何も僕は人の面倒をみれるほど人としてできていない。

「あなたも来年は社会人になるのよ?いつかは後輩の面倒をみなきゃいけないのだから今のうちに勉強するといいわ」

彼女は僕の肉じゃがを全部食べて、ご馳走様でしたと言った。

春休みということもあり職員室はほとんど誰もいなかった。

ドアが開く音がしたので振り向くとミーちゃんがいた。

全く面倒見のいい先生だ。

先生はいつものようにコーヒーと紅茶を持ってきた。

「ミーちゃん、来月から直樹君があなたの先輩よ。わからないことは何でも聞いていいからね。」

ミーちゃんは僕の方を見たが特に何も言わなかった。

僕は大したことは何も教えてあげれないけど、肉じゃがの作り方なら教えてあげられるかもしれないと言った。

「また遊びに来てね」

先生は玄関まで見送ってくれた。

ミーちゃんはバスで来たらしく、家まで送ってあげるよと言うと頷いた。

彼女は何も喋らなかった。

僕も何を話せばいいのかわからなかったので、話さなかった。

先生のことを思い出していた。

きっと夏ごろに就職活動の心配をして連絡がくるだろう。

そして来年の春には社会人のマナー講習を教えるために連絡がくるだろう。

彼女はそこまでして僕に何が伝えたいのだろう。

隣でミーちゃんは眠っていた…